日本にコーヒー豆がもたらされたのは江戸時代のこと。明治になると日本人が喫茶店を経営しはじめてから一般に広まりました。戦争により喫茶店が姿を消し戦後の食料難――そんな時代も人々は工夫をこらして「代用コーヒー」が発明し、コーヒーを楽しんだといいます。どのような珈琲があるのかみていきましょう。
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雑穀コーヒー
戦争によりコーヒーの供給は止まり「敵国の飲料」と呼ばれたため、コーヒーは暗黒の時代を迎えます。とはいえ、コーヒーの魅力を知ってしまった以上、人々は思案し、なんともけなげなことに「コーヒーの代用品」を考え出しました。原料は、タンポポの根、大豆、チコリー、どんぐりの実、カボチャの種、玄米、麦、そば、とうもろこしなどなど……。これらをコーヒーのように焙煎し、苦いエキスを抽出して飲むというわけです。ただ、コーヒーにするどころか、それ自体を食糧として利用したほうがいいものは除外されねばならなかったし、下痢を起こしたりあまりの苦味に驚いたりと、代用コーヒーをめぐってあれこれの混乱が起きたそうです。
平和で流通もよくなった日本ではコーヒー豆の入手は簡単になりましたが、これらの代用コーヒーが現代でもニーズがあるのです。それは、健康上の理由からコーヒーを控える必要のある人や妊娠中の人から、カフェインに対して過剰に反応してしまう体質の人たちには、カフェインレスコーヒーがすすめられるからです。それに味が意外と悪くないのです!
比較的ポピュラーなものをあげてみましょう。
たんぽぽコーヒー
たんぽぽの根を乾燥させ焙煎し、コーヒーの粉ぐらいの細かさに挽いたものをお湯で抽出するものです。ポーランドで発祥し、ヨーロッパじゅうに広まった歴史を持つ、代用コーヒー界のエリートです。妊婦さんや母乳育児中のお母さんにいい成分が含まれているとか、二日酔いや便秘を解消するとか、健康効果が期待できるのだとか。
大豆コーヒー
乾燥大豆を焙煎し、粉末状にしたものです。オーガニック系のショップなどで見かけることが多い。カフェインレスコーヒーとブレンドしたものなどもあり、各メーカーが工夫をこらして開発・販売しています。女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンという成分が大豆に含まれているため、妊活中の女性や美容に意識の高い女性は一度試してみる価値がありそうです。
チコリコーヒー
チコリコーヒーはチコリの根を焙煎し、コーヒーの粉のように挽いたものです。チコリとはヨーロッパ原産のキク科の多年草で、和名は「キクニガナ」という通り、独特の苦味が特徴です。第二次大戦中は、ヨーロッパでもコーヒー豆の輸入がとだえ、コーヒーの代用品として広まりました。フランスでは、いまでもチコリコーヒーが一般家庭で愛用されているそうです。チコリは整腸作用などがあるため、体質に合う場合はすばらしい健康効果が期待できるでしょう。※妊娠中はできるだけ避けた方がいいといわれています。かかりつけの医師に相談してください。
種や花の珈琲
玄米、チューリップやユリの根、干いちじく、ゴボウ、ジャガイモ、ブドウの種、ピーナッツなどなど……。先人たちのコーヒーへの欲望を感じさせられます!
いかがだったでしょうか。戦時中の食糧難が生んだ“代用コーヒー”。先入観を捨てて飲んでみると、意外とハマる人も多いと聞きます。いまはネット通販などでも簡単に、さまざまな種類が手に入るのでぜひ試してみてください。